Timing is Everything

映画好き。好きなジャンルはアクションとヒューマンドラマです。

学びと感動の宝庫。ランディ・パウシュの「最後の授業」

アメリカに「最後の授業」という番組があるらしい。大学を引退する教授の最後の授業をテレビ中継して、アメリカ全土で放映するという番組である。

この番組の中で最も有名なのが、カーネギーメロン大学の講堂で行われたランディ・パウシュ(Randy Pausch)教授の授業であろう。

2007918日、最後の授業を行ったパウシュは当時46歳。

46歳という年齢は、大学を去るのにまだ幾分若い気がする。

実は最後の授業の1ヶ月前、彼はすい臓癌が転移していることが判明し、余命6ヶ月の宣告を受けていた。

このような状況の中、家族のため、教え子のため、そして自分自身のために、彼は「最後の授業」を執り行った。

 

その「最後の授業」の映像は、すべてYouTubeで観ることができる。日本語字幕が載っている動画もあるのでご安心を。英語版の方が若干画質が良く、英語字幕を出せるので、一度日本語字幕で内容を理解して、再度英語版(英語字幕有りで)見ると、良い英語教材にもなると思う。英語版1700万回以上も再生されており、この再生回数が彼の授業の素晴らしさを物語っている。

 

 

 

この授業を見始めてまず最初に驚くのが、パウシュ自身の体調がとても良いように見受けられることだろう。事実、彼はスピーチの序盤で何度も腕立て伏せをやってのけ、息一つ乱れていなかった。そして、もうあとわずかしかない人生を驚くほど冷静に受け入れていた。

さて、パウシュの最後の授業のテーマは「夢の実現」だった。パウシュ自身が子供の頃に描いていた夢をリストにまとめ、その夢をこれまでの人生において可能な限り叶えることができたという。

プロのアメリカンフットボール選手になる、ディズニーのイマジニアになる、スタートレックのカーク船長になる、など本当に子供の頃の夢を、彼は一つ一つ実現させていた。この様子は実際の動画を見てもらえばわかるだろう。映像で観る彼は、本当に活き活きとしていて、パワーに溢れている。それにユーモアもあって退屈なんかしない。計1時間以上も講演時間があったのか、と錯覚するほどである。

 

実は、パウシュの最後の授業を扱った書籍も出版されている。この本は世界15ヵ国で出版されている本であり、最後の授業のDVDも付いている。私は偶然Bookoffで見つけたので、DVDは付いていなかった。

映像の書き起こし版かなと思って、パラパラと立ち読みをしたらそれは大きな思い違いだった。映像での内容もすべてカバーしているが、映像では語り切れなかったディテールが記されている。なにより講演では「泣いてしまうから」と、意図して語らなかった愛する妻への、そして幼い3人の子どもたちへの思いが詰まっていた。

特に印象に残った箇所を取り上げる。

 

学んでいるときは理解できないが、あとになってわかることを教えること。それが「頭のフェイント」だ。「頭のフェイント」の達人は、本当の教えたいことを、相手が気が付かないうちに教えている。

p.59

 

まずは失敗だった。でも、僕は呪文を唱え続けた。ーレンガの壁がそこにあるのは、理由があるからだ。僕達を寄せ付けないためではない。この壁は、自分がどんなに真剣に望んでいるかを証明するチャンスを与えているのだ。

p.72

 

ジェイ()と僕は、新婚旅行中はふたりきりにしてほしかった。でも僕の上司は、連絡がとれるようにしておくべきだと思っていた。そこで僕は留守番電話に最高のメッセージを吹き込んだ。

「はい、ランディです。39歳でようやく結婚したので、妻と1ヶ月旅に出ます。問題がないことを祈っていますが、どうやら連絡がとれるようにしておかないといけないらしくて」。そして、ジェイの両親の名前と住んでいる街の名前を告げた。「番号案内にかければ、彼らの電話番号がわかります。僕の新しい義理の親を、大切な娘の新婚旅行を中断する必要があるくらいの緊急事態だと説得できたら、僕達の連絡先を教えてもらえるでしょう」

電話はかかってこなかった。

時間はあなたものだ。そしていつか、思っていたより少ないと思う日が来るかもしれない。

pp.128-129

 

 

トミーと、僕の他の教え子3人を囲んで、現役の学生が質問をした。映画の仕事は最初のチャンスをつかむまでが大変だという話になって、だれかが幸運の役割について訊いた。その質問に、トミーはこう答えた。

「かなり運が良くないといけない。ただ、きみたちはみんな、すでに運がいい。ランディと研究をして、彼に学べることは、それだけで幸運でもある。ランディがいなければ僕はここにはいなかっただろう」

p.140

 

 

経験とは、求めたいたものを手に入れられなかったときに、手に入るものだ。そして経験は、きみが提供できるなかで、たいていもっとも価値のあるものだ。

p.173

 

この本の最後にある、幼い子どもたち一人ひとりに向けた言葉は心に響くものがある。

そして、これは映像にもあったのだが、妻の一日遅れのハッピーバースデー。

プライズで特大のケーキが用意されており、講堂にいた400人でハッピーバースデーソングを合唱して、ジェイを祝福した。この時の映像は二人の素晴らしい夫婦関係を象徴するシーンであり、感動的だった。

 

やはり映像と本のセットで鑑賞することをおすすめしたい。

後悔はしないはずだし、きっと何かしらの活力を、パウシュから分けてもらえるはずである。

 

最後の授業 DVD付き版 ぼくの命があるうちに

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